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2026-03-24 朝輪 Optimal stomatal models week Day2

論文情報

  • Title: Predicting stomatal responses to the environment from the optimization of photosynthetic gain and hydraulic cost
  • Authors: Sperry et al
  • Journal: Plant, Cell & Environment
    • Year: 2017
    • Volume: 40
    • Issue: 5
    • Pages: 816-830
  • DOI: https://doi.org/10.1111/pce.12852

論文メモ

Abstruct (14mins)

  • 植物はキャビテーション(通水組織の空洞化)や土壌の乾燥を通じて通水コンダクタンス(hydraulic conductance)が過度に低下することを防ぐために、気孔を通じて水損失をコントロールしている
  • 植物が、炭素獲得と水損失との差分をどの瞬間においても最大化させているのならば、モデルは時間の経過に伴う環境変化に対する気孔応答の軌跡を予測することができる
    • より少ない計算コストと、経験的なパラメータを抜きで
  • Sperry モデルは、様々な VPD・[CO2]の状況下で、湿潤土壌において、Leuning の経験モデルと同じ結果を示した(r^2 > 0.99)
    • 経験的な係数がない点
    • 乾燥地域にも適用できる点
    • ガス交換と一緒に植物の水利的な状態を予測することができる

Introduction (34mins)

  • 最適化モデルの有効性はこれまで長く認識されていたが、特に乾燥土壌に対する応答という点において、1) 最適化の指標が何なのか、2) 真の適応度コストと利益の関係が不確実であったためモデリングまで実用化されていなかった
  • 古くからある最適化モデルの Cowen-Farquhar mdoel(1977)は、予め決められたEの積算量の中でAの積算量を最大化するように気孔を制御する、というものである。
    • A constrained-optimization problem (total E is constrained)
    • ラグランジュ乗算定数: λ'を必要とする(しかも、時間が経過してもずっと δE/δA=λ')
    • 加えて λ'の値をアプリオリに設定する必要があるが、真の値なんかわからない(経験的係数となってしまう)
  • 使用した水分量や期間に関わらず、植物は常に実際の水分利用コストに対して炭素獲得を最大化しようとしている、と考えるほうが自然でないか?
    • profit = gain - cost; no λ'!!
    • この式を微分して δcost/δgain = 1 となる時(=2 つのグラフの接線が平行になる時=単位炭素獲得のために単位水分損失するとき=炭素獲得と水分損失が釣り合う時)、profit は最大化
  • 気孔は「導管のキャビテーションを避ける」という制約の元で、光合成速度を最大化するように働くことが分かっている
    • 導管のキャビテーションは、死亡(植物にとって最悪の適応度コスト)と密接に結びついている
  • 1)Leuning モデルとの比較、2)利益最大化と「E/A = λ'」の制約付き最適化との間における、気孔挙動の対比についても議論

Model performance (39mins)

https://gemini.google.com/app/14c43d7898d2254d

  • 気孔開度は、環境だけでなく形質の変化(=Cavitation resistance の変化=xylem vulnerability の変化)に対しても応答する(Fig 2)
    • Gmax(optimal diffusive conductance; 気孔からの水蒸気拡散コンダクタンス)は xylem vulnerability に依存しないことがわかった(Fig 3)
  • Sperry モデルは、VPD が上昇したときに気孔を閉じるという最適化を導く(Fig 4)
  • 弱光下、また光合成の最適温度を超えたときに気孔を閉じる(Fig 5)
    • 水理のみに基づいたモデル(Sperry 2016)は、一定の VPD で、温量資源が変化しても気孔開度は変えられなかった
  • Leuning モデルは土壌が乾燥したとき(Ps が低下したとき)、Gw を過小評価する(Fig 8d)

Discussion

  • 従来のモデルのような場当たり的な(ad hoc)係数を使わず、測定可能な植物形質(水理・生化学プロセス)のみから気孔応答を予測できることを証明
  • 同一のアルゴリズムで、蒸散、光合成、気孔の水蒸気拡散コンダクタンス)、道管圧力、葉温など、植物のガス交換と水理状態を包括的に予測可能
  • モデルは、k_max, G_max, V_max が互いに密接に調整されていることを予測しており、これは「C3 植物は好条件下で C_i/C_a ≈ 0.7 を維持する」という多くの観測データと一致
  • 導管が脆弱(xylem vulnerability)な種ほど、逆に k_max を高くして圧力差を抑え、光合成に必要な水を確保するという興味深い適応戦略がモデルから示唆