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論文情報
- Title: Inferring CO2 fertilization effect based on global monitoring land-atmosphere exchange with a theoretical model
- Authors: Ueyama et al
- Journal: Environmental Research Letters
- Year: 2020
- Volume: 15
- Number: 084009
- DOI:
https://doi.org/10.1088/1748-9326/ab79e5
論文メモ
Abstract
- e[CO2] enhances photosynthesis and reduces transpiration across various scales bia the CO2 fertilization effect.
- Authors evaluate the magnitude of the CO2 fertilization effect from 2000 to 2014 globally based on constraint optimization of GPP and ET
- 104 eddy-covariance (EC) stations
- a constant increase of GPP (0.138 ± 0.006% / ppm) and a concomitant decrease in transpiration (-0.073 ± 0.006% / ppm) due to e[CO2]
- the current increase in [CO2] could potentially explain the recent land CO2 sink at the global scale
Introduction
- [CO2]が上昇すると個葉の光合成能力が向上して生態系スケールのGPPが増加する(CO2施肥効果)
- [CO2]がある値まで上昇すると光合成速度は飽和するが、現在の[CO2]はそれと比べて低いので「CO2施肥効果」が起こる
- CO2施肥効果によって陸域のCO2吸収が強化され温暖化が緩和される
- 炭素循環に加えて、水循環も影響を受ける
- e[CO2]は気孔コンダクタンスを小さくして(気孔抵抗を大きくして)ETを減少させる。
- CO2施肥効果の直接的な測定は難しく、定量的な大きさは明確ではない
- FACE実験も行われているが、アクセスの容易な若齢の温帯林や作物に限定
- x2[CO2]みたいな実験が行われても、結局自然環境下で[CO2]は緩やかに上昇していく
- state-of-the-art ESMにCO2施肥効果は組み込まれているものの、モデルの不確実性の原因となっている
- 炭素・水循環に対するCO2施肥効果の影響だけをうまく取り出したい
- 104-flux tower site / 770 site years
- 様々なバイオーム
- 観測データの統計解析や直接利用では小さすぎてわからないCO2施肥効果の影響をみる
Method
入力データ
- 様々なバイオームで1990〜2014年においてECフラックスタワーで観測された104のサイトデータ(770のサイト年)
- 森林サイトはそのうち66つ
- アジアは5つのデータセットから60の観測サイト、残り44つはFLUXNET2015から取得
- さらに44つのうち39つのサイトは10年以上のデータ
- 残り5つは10年以下だが南米とアフリカをカバー
- 時別・30分別の気象データ(風速、APAR、気温、相対湿度、降水量、気圧、純放射量、地中伝導熱)とフラックス、[CO2]、LAI、生育気温
- GPPは直接取得していない
- NEEからREを引いてGPPを算出。その際、観測データからランダムに抽出して計算するプロセスを100回繰り返し、その平均をとることで外れ値の影響を平滑化(単純なブートストラップ法)
- CO2施肥効果を検討するのに[CO2]のデータが必要
- CarbonTracker 2015 (CT2015)
- 2000年以前の各サイトの濃度は、ハワイ・マウナロア観測所の長期記録から「2000年との濃度の差分」を計算し、それを各サイトの2000年の基準値から差し引くことで推測
実験手順
- 前提としてやりたいことはiBLM-ECという陸面モデルを使ったGPP/ET推定
- iBLM-ECは光合成や気孔コンダクタンスなどのプロセスを組み込んだ生物化学的なモデル
- 光合成はFarquhar、 気孔コンダクタンスはBWB
- CO2施肥効果のみを抽出したいので、関連する$Vc_{max25}$、$J_{max25}$、$m_{bb}$、$b_{bb}$ の4つのパラメータを同時に最適化
- サイトごと・1日ごとに計算
- 8日間の移動窓(moving window)の使用(8日間のデータをずらしながらパラメータ推定)
- 大域的最適化手法(SCE-UA法)を用いて、ランダムな初期値から10回計算を繰り返し、各パラメータの「平均値」と「標準偏差(ばらつき)」を算出
- 標準偏差が10%を超えるデータは破棄
- 等結果性(equifinality;異なるパラメータでも出力される結果が同じになってしまうこと)を排除
- その上で順化とのisolate
- 上で推定した日単位の最適パラメータでの計算結果(a)と、各DOYにおけるパラメータの中央値の季節変化を利用した計算結果(b)の差を取った
- 最後に全球的な施肥効果の検討にはML使ってる
- 最適パラメータでe[CO2]へのフラックスの感度が分かっている($\mathrm{ppm}^{-1}$)
- 66箇所の観測サイト(=森林)を対象にして、ランダムフォレスト回帰を用いて、気象条件やLAIなどからe[CO2]に対するフラックスの変化率($\mathrm{ppm}^{-1}$)を予測
- これを既存の衛星から取得した全球的なGPP・ET推定値(Kondo et al. 2015など)から引くことで全球的なCO2施肥効果だけを抽出する
- これはすでにCO2施肥効果を考慮している数値
- MLで求めたフラックスの変化率とCT2015から算出したCO2上昇量から施肥効果を含まないGPPとETの増加量(2000年以降の)を推定する
Results / Discussion
- e[CO_2]で、GPPは 0.138% $ppm^{-1}$ の割合で増加し、気孔コンダクタンスは -0.073% $ppm^{-1}$ の割合で減少
- 非森林>森林
- つまり水利用効率が大きく向上;FACE実験の結果と一致
- 順化とのisolateで求めた差分を使って、[CO2]が1 ppm増加したとき、GPP/ETが何%増加するか(% $\mathrm{ppm}^{-1}$)を算出
- ヒストグラムに並べて見てみると、順化の影響は限定的
- むしろ多くの生態系でGPPを増幅させており、これは葉レベルの能力低下をLAIの増加が補償したためと考えられています。
- CO2施肥効果によってGPPは増加(増加トレンドの約60%は施肥効果のせい)、同時にET増加に対しては抑え込む役割(気孔を閉じる)
Conclusion
- 本アプローチの有効性と広がり
ビッグデータ(渦相関法データ)と理論モデルを融合させたアプローチにより、観測所の少ない熱帯林や北極圏などの広域における陸域シンクのメカニズムとETのトレンドに対して、新たな洞察を提供することに成功しました。
- 現在の経験的モデルに対する限界の指摘
衛星から得られる分光指標(緑の濃さなど)や気象データのみに依存した「経験的なアップスケーリング」や「半経験的モデル」では、CO2上昇に伴う「目に見えない生理学的な変化(光合成効率の上昇や気孔の閉鎖)」を正確に捉え切れていない可能性があると警鐘を鳴らしています。
感想
- 経験モデルに依拠しすぎ?LAIが入力だったり、モデルそのものの精度ってどうなんだろう
- 手法は真似できると思った
- 順化もモデルに取り入れていくべきだな